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キューバにおけるアノールトカゲの局所群集の多様性を決める要因  

適応放散・収斂進化しているカリブ海のアノールトカゲ  

アノールトカゲは、380種が知られており、そのうちカリブ海の島々に160種が生息しています。そのうち、キューバには63種のアノールトカゲがみられ、96%が固有種です。アノールトカゲは、樹木などの棲息場所によって、形態や行動が違っており、それぞれ異なるタイプをエコモルフ(ecomorph)と呼んでいます(下図,Losos, 2009を改変)。樹冠にすむ大型のタイプをTrunk-Crown型, 幹から樹冠にすむTrunk-Crown型、枝につかまるTwig型、幹から地上に生息するTrunk-Ground型、草地ややぶに生息するGrass-Bush型などがあります。これらのエコモルフはカリブ海の異なる島で、独立に同じ型が進化していることが知られています(収斂進化)。そのため、アノールトカゲは適応放散(adaptive radiation)と収斂進化の進化学におけるモデル生物となっています

キューバに生息するアノールトカゲ


 

局所群集の種多様性を決める要因  

 さらにキューバでは、同じ幹から地上に生息するTrunk-Ground型の種が15種いて、同じ場所に数種のTrunk-Ground型が共存しています。(下図は、キューバに生息するTrunk-Ground型)


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達は、局所的な群集で共存するTrunk-Ground型の種数を決定する要因を探りました。

 古典的には、局所的な群集に生息する種数は、異なる種の間で生じる競争などの生態学的相互作用によって決定されると考えられていました。その後、種の多様性は、もっと広範な地域でどれくらい種が生じているのか、また、それらの種が局所的な群集にどの程度、移入したり移出したりしているのかが重要であると主張されるようになりました(歴史的・地理的な要因)。しかし、実際は、局所群集内での生態学的な相互作用と歴史的・地理的な要因がそれぞれ種数に影響していると思われ、相対的な重要性を調べることが重要だと思われます。
 

それぞれの種がどこで起源したかを推定する  

 私達は、キューバの11の局所群集(AからK)、247個体のサンプリングを行いました(下図)。局所群集には2種から5種のTrunk-Ground型のアノールトカゲがみられました。このうち、2種から3種は、同所的に生息しており、通常、森林内、林縁部、開けた場所というふうに生息環境を変えて共存していました。[キューバサンプリング地点の一部の様子] 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、系統樹を推定し、それぞれの種が、キューバの西部、中部、東中部、西東部、東部のどこで起源(種分化)したかを推定しました。その結果、多くの種が起源した地域の群集ほど多くの種が生息していること、また、森林内、林縁部、開けた場所というふうに生息環境を変えて共存できている群集ほど種数が多いことがわかりました。このことは、種の多様性は、生態学的な相互作用と種分化がどれだけおおいかという進化的な要因によって決まっていることが明らかになりました。

 

この研究は以下からみれます。  

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