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遺伝子ネットワーク構造の進化  

生物進化における遺伝子ネットワークの進化と役割  

生物の表現型は、多くの遺伝子が相互作用をして創り出されます。様々な遺伝子が相互に影響しあって調節されている様子を遺伝子制御ネットワークといいます。なぜ、生物は、複雑で多くの遺伝子が関与する遺伝子制御ネットワークを進化させたのでしょうか?
自然選択は、通常、個体の生存や繁殖に影響する個体の表現型に対して働きます。遺伝子制御ネットワークは、表現型の個体間の遺伝的な違いをつくりだす突然変異の生成に関わっていると考えられ、それ自体が間接的に自然選択の影響をうけると思われます。  そこで、遺伝子制御ネットワークによる表現型をもつ個体をコンピューターの中で進化させました。このモデル個体は、複数の調節遺伝子が相互作用して、最終的に、表現型に関与する遺伝子(表現型遺伝子)の発現量によって表現型がきまります(下の図)。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、個体の適応度(生存し残す子供の数)は、その個体の置かれた環境によって決まります(下図)。環境は、ランダムに変化する場合(下左)と、周期的に変動する場合を想定しました(下右)。環境が変化すると、表現型が同じでも適応度は変化します。表現型は、複数の遺伝子の相互作用によって決定され、遺伝子の数や相互作用の種類や強さは突然変異によって変化します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シミュレーションの結果、環境がランダムに変動したとき、遺伝子ネットワークに関わる遺伝子数(コア遺伝子)が増える方向に進化しました(下図左)。また、大きく複雑に進化した遺伝子ネットワークは、ランダムな突然変異が生じても、致死になる確率が小さくなっていました(頑健性が増大)。さらに、突然変異によって表現型が変化する場合が多く、その変化の度合いは小さいものでした。このことは、複雑で大きな遺伝子ネットワークは、進化可能性が高い(表現型を大きく変化させる突然変異が少数生じるよりも、少しだけ変化させる突然変異が多く生じる方が、進化的な変化が生じやすい)といえます。
この研究により、表現型に働く自然選択よって複雑で大きい遺伝子ネットワークが進化し、その結果、頑健で、進化可能性の高い遺伝子ネットワークが進化したことをはじめて示した研究となりました。この研究は、ゲノム内の遺伝子重複率が高いほど進化可能性が高いというショウジョウバエのゲノム解析の結果を支持するものです。ゲノム内の遺伝子重複率と進化可能性の関係 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

この研究は以下からみれます。  

Tsuda, E. M." and "M. Kawata (2010) Evolution of gene regulatory networks by fluctuating selection and intrinsic constraints. PLoS Computational Biology 6(8): e1000873.  Open Access

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